南海化学株式会社
苛性ソーダを中心に化学製品のメーカーとして115年の歴史を誇る南海化学株式会社(本社:大阪市西区)。化学ということでお堅い男の会社というイメージが持たれがちですが、女性が働きやすい会社へと、大きな変化の真っただ中にいます。
核となるのが、
2018年に発足した「女性活躍推進タスクフォース」。健康診断や勤務体系などで既に制度変更を実現しています。リーダーの山田美紀様と、ボードの立場からサポートする取締役執行役員の室井真澄様に、社内の変化や今後の取り組みについてうかがいました。
女性活躍推進タスクフォースを中心に、長く働ける会社目指し制度改革次々と
同社の最近の名刺には「女性活躍リーディングカンパニー」(※)のロゴマークが印刷されています。大阪市が認証する制度で、「意欲のある女性が活躍し続けられる組織づくり」「仕事と生活の両立(ワーク・ライフ・バランス)支援」「男性の育児や家事、地域活動への参画支援」において、制度面の実績があると認められた企業が認証されます。
南海化学は今年2月、最も高いレベルである「二つ星」に認証されました。
(※)「女性活躍リーディングカンパニー」:大阪市では、「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」認証事業を実施しており、企業等からの申請を広く受け付けています。少子高齢化が一段と進行し超高齢社会を迎えている中、労働力人口が減少し、現役世代の負担はさらに大きくなっているにもかかわらず、結婚や出産を機に離職する女性が多く、女性の登用が進んでいる企業はまだまだ少ないという状況です。
そのため、法令の遵守に留まらず、「意欲のある女性が活躍し続けられる組織づくり」「仕事と生活の両立(ワーク・ライフ・バランス)支援」「男性の育児や家事、地域活動への参画支援」について積極的に推進する企業等を、本市が一定の基準に則り認証し、当該の企業等が社会的に認知されることでその取組みが広く普及するよう、「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」認証事業を実施しています。(大阪市H.Pより)
山田さん:
女性活躍推進タスクフォースが2018年に生まれ、本社や工場の女性社員が会社から声を掛けられて集まりました。それまで面識のない人もいたのですが、テレビ会議を通じてランチ会をしたりして、とても盛り上がりました。大きなテーマの一つとなったのが、女性役職者を増やすことです。そのためには、女性が長く働き続けられる会社でなくてはなりません。
そこで、40歳以上が対象だった会社負担の乳がん検診や子宮頸がん検診を40歳未満でも受けられるようにするべきだという声が上がり、実現しました。また、子育て中は学校行事等で有給休暇日数が足りないよねという意見も出て、入社後4ヶ月以内の試用期間中の社員も利用できる年2回の有給の特別休暇である
「ライフサポート休暇」もできました。
室井さん:
ライフサポート休暇は当初、ファミリーサポート休暇と言うネーミングでいこうとしたのですが、タスクフォースから、それでは独身者ら家族のいない社員は対象外のように思われるとダメだしされて、名前を変えたんです(笑)。
女性が生き生き働ける会社こそが、経営効率を上げ持続的成長につながる
タスクフォースをあえてつくったくらいですから、それまではやはり、男性社会でした。
女性社員の数が少ないうえ、早期に辞める人が多かったのが実情でした。
山田さん:
2003年に入社したころは、本社に女性社員は5、6人だけ。結婚したら辞める、そうでなくても出産したら辞めるのが当たり前でした。でも、社外の会合などに行けば、女性の役員もおられ、うらやましさを感じるとともに、女性のモチベーションが上がり、やる気があれば働き続けられる会社にしたいなと思うようになっていました。
室井さん:
2016年に女性活躍推進法ができ、その対象は301人以上の企業となっていましたが、女性が生き生きと活躍できる職場環境を整えることや女性社員のキャリアアップの機会を増やすことに、社員数は関係ありません。そうした取り組みは経営効率を高め、会社の持続的成長につながるという判断で、タスクフォースをつくりました。女性のためだけの改善と思われると、男性社員からひがみややっかみが生まれがちですが、女性が働きやすい職場は男性にとってもいいはずです。
ライフサポート休暇などはそのいい例だと思います。
大阪市に続いて、南海化学発祥の地であり、工場がある和歌山県が認証する「女性活躍企業同盟」「わかやま結婚・子育て応援企業同盟」への参加も認められました。
現在、もう一ヶ所の主要拠点である高知県の同様の認証制度の「ワークライフバランス推進企業認証」の取得に向けて取り組んでいます。
そのほかには、どんな成果が生まれたのでしょうか。
室井さん:
育児介護休業法では、時短勤務が認められるのは子供が3歳までとなっていますが、それを
小学校就学時まで引き上げました。また、
時差出勤も子供が小学校に就学する前までだったのを、小学3年生終了時までにしました。特に工場では、シフトを組むうえで支障はありますが、対応しなければいけないと考えています。
制度改革が社員の意識変革につながっていることを実感
タスクフォースができて3年余がたって、社内では変化も出てきているようですね。
山田さん:
最初は男性上司に言いにくいことがありました。でも最近は、男性社員が声を掛けてくれるようになりました。子供を病院に連れていきたいんだけどいいかなとか。若い男性社員は育児に取り組んでいる人も増えてきているんですね。男性の育休取得は過去に1人しかいませんでした。
今回、ようやく2人目が出ました。タスクフォースはスタートから3年がたった今年、新たなメンバーで再スタートを切りました。私は変わりませんが、毎月1回の定例テレビ会議などで討議し、「女性のため」だけにこだわらず、「女性の視点」から働きやすい、働き甲斐のある職場、魅力的な会社になるよう、積極的に提言していきたいと張り切っています。
すでに、今後の改革テーマも視野に入っていますね。
山田さん:
次世代法によって、子育てサポート企業と認定されれば
「くるみん」マーク(※)がもらえます。これまでの認証制度よりハードルが高いのですが、ぜひ取得して名刺に入れたいですね。新しいテーマとしては、介護制度の改革に取り組みたいと考えています。子育てと違い介護は終わりが見えません。それだけに、影響を受ける人は多いのではないでしょうか。福利厚生にも取り組もうと思っています。かつては社員旅行があり、それに代わって慰安会を開いていましたが、新型コロナウイルスの影響によりそれもできなくなってしまいました。価値観が変わっていく中でお金を出せばいいというものではありませんが、会社の一体感を高めるためにも何かやりたいと考えています。
(※)「くるみん」マーク:厚生労働省が少子化対策をはかり、子育て支援など一定の基準を満たした企業や法人などが認定され、「くるみん」マークを広告や商品(役務も含む)などに付け加えることができます。
室井さん:
女性の管理職を増やすという課題はありますが、一方で、なりたがらない社員もいます。実は、それは男性社員でも同じなのです。無理に抜擢するのではなく、やりがいやモチベーションをどう生み出すかが男女共通の課題になっています。管理職には「自らが仕事を楽しむ姿を示して欲しい」と伝えています。
国連の
SDGsの17の目標のひとつに「女性活躍推進」(※)があります。今年スタートした新中期経営計画ではSDGsに本格的に取り組むことを決めました。女性の活躍と共に
「働き方改革」「ダイバーシティ推進」「次世代教育振興」「健康経営推進」に特に注力して、社内外で社会的価値を創出し続ける企業になるべく、グループ一丸となって取り組んでいきたいと思っています。
(※)SDGsの「女性活躍推進」:SDGsの目標5 「ジェンダー平等を実現しよう」。この目標5は「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」のテーマのもと、9個のターゲットから構成されています。
代表取締役社長 執行役員 菅野 秀夫氏
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