株式会社ミライロ
株式会社ミライロは、車椅子での生活を送る 代表 垣内俊哉さんが立ち上げた会社です。
垣内さんは、生まれつき骨が折れやすい『骨形成不全症』により、車椅子での生活を送ってこられました。2010年、車椅子だからこそ気付けること、伝えられることを社会に活かすために会社を設立。障がいを価値と捉えるバリアバリューの視点から、誰もが安心して快適に過ごすことができるユニバーサルデザインのモノやサービスを生み出すソリューションを提供しています。
誰しもが抱える弱みやコンプレックスは、視点を変えればそれは強みです。
弱みやコンプレックスなどのバリア(障がい)は、強みであるバリュー(価値)に変えることができます。
その理念は「Japan Venture Awards 2018」で、ミライロが最高位賞「経済産業大臣賞」を受賞、「関西財界セミナー賞」特別賞を受賞するなど受賞歴は多く、その存在が広く認められています。
『バリアバリュー』という企業理念を持つ会社としての思いを、広報部 神保さほりさんに伺いました。
遺伝性の病気と共に生まれてきた垣内代表
オオサカジン編集部:株式会社ミライロを、垣内代表が立ち上げたきっかけを教えてください。
骨形成不全症という、骨が脆く折れやすいという魔法にかけられて生まれてきた垣内。小さい頃は、転んで骨折、友だちとぶつかって骨折…という日々でした。だんだん筋肉が衰え歩けなくなり、小学校高学年の頃には車椅子の生活となっていきました。その後、小さい頃からの『歩きたい!』という夢を叶えるために、高校の頃にリハビリに数年通ったのですが、そこでは結局歩けるようにはならず…。
夢は破れてしまいました。
小さい頃からの夢は破れたものの、リハビリ生活での出会いやアルバイトなど、様々な経験を経て、自分で稼げるようになろうという夢が新たに芽生えます。その夢を叶えるために大学で経営学を学び、大学3回生の時にミライロを立ち上げました。
歩けないことに誇りを持て!
オオサカジン編集部:企業理念である『バリアバリュー』は何がきっかけでできたのですか?
大学生の頃、制作会社でアルバイトを始めた時のこと。最初は車椅子なので、パソコン業務などをするのだろう…と思っていたものの、そこの社長に「営業だよ。」と。
自分は車椅子なので、そもそも移動に時間がかかるし、車椅子が入れる、通れるオフィスも限られてしまう。そんな営業マンとして不利な状況に苦戦しました。
そんな中、会社を絞って営業に回りました。車椅子でも入れる、営業に行くことができるオフィス。同じ会社に何度も足を運ぶうちに、顔を覚えてもらい、話を聞いてもらえるようになり…そこから受注に繋がりました。
自分は、歩けないから、覚えてもらえた。
歩けないから、営業としての関係を確立できた。
車椅子だから、トークを磨こう、会社一件一件に集中しよう、と自分が精一杯できることを考え、スキルを磨くことができました。
「車椅子でも出来ることではなく、車椅子だから出来ること、自分のバリアをバリューに変えることが出来る!」と実感したことから、これが後に立ち上げるミライロの企業理念になりました。
オオサカジン編集部:理念を元に、会社を立ち上げたのですね。
では、ミライロは最初、どんな仕事から始めたのですか?
最初に始めたのは、大学内のバリアフリーマップを作成する、というものです。普段キャンパスで生活をする中で、どこに多目的トイレがあって、どのルートが行きやすくて…というのがわかりにくかったんです。会社を立ち上げた当時、垣内が学生だったからこそ、障がい者だからこその視点を活かして、マップ作成を行いました。
オオサカジン編集部:まさにバリアバリューですね!
そんなミライロという会社では、どんな方が働いているんですか?
身内に障がいがあったり、小さい頃から障がいのある方と関わってきたりした社員が多いですね。
ミライロで働く中で、目に見えて社会がより良くなっていくのがわかる、その変化に一つの歯車として関わっているのが実感出来る、何か社会貢献をしたい。
そんな思いを持った方が多く働いています。
6つのソリューションを提供
オオサカジン編集部:ミライロでは現在、どのようなサービスを行っているのですか?
高齢者、障がい者、LGBT、外国人など、移動や生活に不安を感じている人の壁は3つあります。それは「意識の壁」、「環境の壁」、「情報の壁」です。
これらを解消するために、ユニバーサルマナー、ミライロ・リサーチ、ミライロ・アーキテクチャー、ミライロ・クリエイティブ、ミライロ・コネクト、ビーマップ、という6つのソリューションを提供しています。
オオサカジン編集部:6つのうちの1つ、『ユニバーサルマナー』について詳しく教えてください。
高齢者や障がい者、ベビーカー利用者、外国人など、多様な方々を街で見かけます。一人ひとりに向き合い、適切な理解のもと行動することは、特別な知識ではなく「こころづかい」の一つです。
多様な方々に向き合うためのマインドとアクション、それがユニバーサルマナーです。
このユニバーサルマナーの検定を2013年8月から実施しています。この検定は、現在受講者が6万人に登り、導入してくださっている会社は600社に上ります。大同生命さんは、2017年全役職員7200名の方が受講されています。また、イオングループさんは、2020年までに従業員7万人が受講予定です。
ハードは変えられなくても、ハートは変えられる
最初は、バリアフリーマップなどハード面を整えていきました。しかし、ハード面だけで誰に対しても完璧に整えられた状態にする、ということが難しいんです。
例えば、視覚障がい者の方のために、点字ブロックを整えても、それは車椅子の方にとっては通行しにくい、といったように。
でも、ハードは変えられなくても、ハートは今すぐ変えることができるんです。人との向き合い方や接し方は変えられます。
オオサカジン編集部:ハートを変えていくための検定なのですね。
目の前の方のことを考えて、寄り添って行動しましょう、という思いやり。これをマナーとして、当たり前として、身につけていくための検定です。
日本はハード面の整備は進んでいて、バリアフリー先進国です。一方でソフト面が諸外国に比べ弱いです。最初の一歩が、遠慮や気遣いで踏み出せない。海外に調査に行くと強く感じますね。整っているハードがあるが故に弱いソフト面をユニバーサルマナーで整えていく、という姿を目指しています。
オオサカジン編集部:その他のソリューションは、どのような内容なのですか?
『ビーマップ』というのは、外にでかけるときに、どこにどのような設備があるのか、どんな設備が整っているのかの情報が乗っているアプリのことです。バリアフリー情報(段差がない、店内車椅子可能、など)をスポットとして登録できる、食べログのバリアフリーバージョンのようなものです。
また、『ミライロ・コネクト』というのは聴覚障がい者の方が電話をしたい時、会社の窓口で対応して欲しい時などに手話通訳士が遠隔通訳するものです。
オオサカジン編集部:これらのコンテンツは、どんなところから生まれるんですか?
実体験によるものです。
垣内と食事に行くこと一つにしても、車椅子で行ける店を探す必要があり、意外と見つからないんです。ただ、食事の度に探し、障がい者目線で有益な情報は、同じように障がいのあるみんなでシェアしたらいいよね、という話から生まれています。常に、オフィス内に障がいのある社員がいる状態なので、日常から気付きなどは多いです。
こうやって、すべて実体験から出来上がっています。
オオサカジン編集部:常に気付きがある環境の中で、バリアをバリューに変え、社会を変革しているんですね!
2016年の障がい者差別解消法、2020年のオリンピック、パラリンピック、さらに2025年の大阪万博を契機に様々な角度から、バリアを解消するための取り組みが必要となります。
今後、ますます必要とされる中で独自の発展が楽しみな企業です。
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