誠翔園
特別支援学校を卒業したものの就職先が見つからなかった、うつ病で前職を辞めてから再就職先が見つからない…。様々な事情で、企業等に就職することが困難な方がいます。そんな方たちが就労機会を得て、知識や能力の向上に必要な訓練をする就労継続支援A型事務所。今回は、守口市にある
就労継続支援事業所 紙すき工房 守口誠翔園 に伺いました。
代表の
森川 誠榮(せいえい)さんは、
・誠翔園(代表者)、紙すき工房 守口誠翔園(管理者)
・誠翔園サポーターズ(事務局長)
・一般社団法人全国資源物再利用促進機構(理事)
・2021年に大阪府で児童虐待死を0人にするプロジェクトの『ゼロ会議』参加
・SDGs(持続可能な開発目標)への積極的な取り組み
といったようなたくさんの顔を持ち、社会活動をされています。
守口誠翔園の事業内容や一人ひとりの適性の見極め方、これからの働き方などたくさんの話をお聞きしました。
『就労継続支援A型事務所』とは、障がいや難病のある方が一定の支援がある職場で、雇用契約を結んだ上で働くことができる就労支援事業の一つです。障がいや病気の知識や理解がある職場スタッフのサポートのもと、安定的な就労をすることができます。
森川さん「誠翔園では、就労支援事業の一環として紙すきをおこなっています。紙すきのやり方は、まず紙パックのビニールコーティングを剥がし、中のパルプだけを取り出します。それをシュレッダーにかけて、2時間ほどミキサーにかけてドロドロに溶かします。それをすいていく…という感じです。紙すきでできた新たな紙は、僕の周りにいる経営者の方や何か事業をしている方に名刺にしてもらう事で、活用することができます。廃棄処分されるだけの紙ゴミが、紙すきという方法と利用者の方の手によって、再生紙製品として生まれ変わらせることができるんです。
やりたいところをやってもらう
紙すきの一連の流れは分担作業です。各ポジションは、原則自分がやりたいところをやってもらっています。水でビショビショに濡れて一番大変なポジションがあるんですが、そこしかやらない、という利用者もいますよ。水に濡れるのが嫌な周りの人とかは、彼に率先してやってもらえることを喜んでます(笑)
就労継続支援事業所によっては、人の出入りが激しいところもあるんですが、守口誠翔園ではお互いにあだ名をつけあったり、積極的に会話をしたりして、和やかでアットホームな雰囲気ですよ。」
守口誠翔園の利用者のある女性Aさんは、長年にわたって「統合失調感情障がい」「鬱病」「離人症」等の精神疾患を抱えており、またそれらに伴う身体的疾病に悩まされ続けてきたとのこと。しかし、守口誠翔園に通う中で、徐々に自分らしさと笑顔を取り戻し、元々持っていた個性を発揮できるようになったそうです。
森川さん「Aさんは感受性が強いからか、感性もとても豊かで。絵や写真の才能がすごいんです。その才能を発揮している、彼女のデザインする名刺やカレンダーは本当に素晴らしいんです。」
できることから始めた表現者
守口誠翔園に通い始めたばかりの頃Aさんは、満員電車に乗れなかったんです。人の多さとか人との距離感とかも苦痛だったので、通勤時間をずらすことで少しずつ慣れていってもらって。今ではすっかり克服して、どこでも電車を使って行ってますよ。
イラストレーターというソフトを使ってデザインをしてもらったり、名刺を作ってもらったり、ロゴを考えてもらったり…。誠翔園での仕事の一環として行っています。出来ないことを並べるより、出来ることに挑戦していく!をモットーに、この世界の素晴らしさや今生きていることの奇跡、心の動く瞬間に出会うために表現者として活動されていますよ。
私たちは皆、一人ひとりが異なる性質や能力、素質、性格を持っています。そして多くの人は、能力や適性を活かしたいと望んでいます。働き方がますます重視されるこれからの時代、どうすれば『個』をもっと活かすことができるのでしょうか。
森川さん「以前、広汎性発達障がいの男性Bさんに、職業移行支援の一環でパソコンを教えていたんです。その人はパソコンおもんないーとずっと言ってて。ある時、そのBさんの職業指導員が『僕、アイロンがけがめっちゃうまいんですよね』って得意げに言ってたので、アイロンを持ってきてもらったんです。で、試しに教えてみました。すると、最初は嫌々ながらアイロン掛けをやっていたBさんが、自分からくしゃくしゃのシャツを家からたくさん持ってきてアイロンを充て始めたんですよ、気に入ってね、毎日です(笑)
ほんのちょっとしたアクションが、障がいを持つ方のスキル作りのきっかけになるんです。障がい者にとって何か就職に役立つものであれば、内容はパソコンでなくてもいいんです、それがたとえアイロン掛けでも。障がい者には、いろんな方、パターン、タイプがあって。その人その人にあった適正、可能性、属性はバラバラなんです。それをコーディネートしていくんです。
ダメだったらまたその時考える
今は売り手(求職者)市場ですよね。やりたいこと、興味あることは仕事としてやってみたらいいと思うんです。職場のストレス等から精神疾患を抱えてしまう人がすごい勢いで増え続けている現在、好きでもないやりたくもないことを5年10年ずーっと続けて、心が病んで、離職して、引きこもって…という道を歩まずに、アクションを起こせばいいと思います。自分の好きな方向に行ってみたらいい。
頑張ってみて、ダメだったらそこでまた考えたらいいんです。
社会的に弱い立場の方々の支援や救済。理想的な働き方や社会を循環させていくためには、まず自分ができることをやっていくことの大切さを森川さんやAさんに教えていただきました。
紙すき(紙漉き)作業でリサイクルした再生紙は、書やポストカード、カレンダーなどに使われ、販売もされているそうです。
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