株式会社 Dreams(ドゥリームズ)
ポップコーンはフライパンに油を敷いて、豆を入れて弾けさせて…という簡単に作ることができるイメージですが、完成まで実は細かな作業工程を伴います。このとても難しい工程を障がい者雇用で戦力としている企業があります。
株式会社 Dreamsでは、障がいを持つ方だけでなく、誰でも働きやすい環境を整える環境づくりをベースに、美味しいポップコーンの製造・販売を行っています。
障がいを持つ方の雇用環境や仕事内容、背景にあった3S活動などについて、ブランドマネージャーの三箇淳司(サンガジュンジ)さんに伺いました。
USJや天保山などおなじみの場所で長年ポップコーンを販売しているPOPCORN PAPA(ポップコーンパパ)。1990年に日本初のポップコーン専門店としてアメリカから上陸。アメリカ生まれ日本育ちのお店として株式会社 Dreamsが経営をしています。常時32種類、和から洋、変わり種まで他社では考えられない種類の商品とともに、お客様に笑顔と喜びをお届けしています。
障がい者一人ひとりの個性に合わせた働き方が評価されています。
・2016年 第6回日本でいちばん大切にしたい会社大賞 審査委員会特別賞受賞
・2018年 大阪府障がい者雇用貢献企業 ハートフル企業教育貢献賞受賞
年に一度開催している経営計画発表会でのスタッフ集合写真。
三箇さん「現在、障がいのある社員は2名。アルバイトで2名です。うち3名は店舗スタッフとして働いています。もう1名は障がい者として初めて社員になった方で、ドライバーとして働いています。
元々障がい者雇用を目指していた訳ではなく、あるご縁で作業福祉施設の方とつながり、施設外就労先として、障がい者の方との関わりを始めました。
その時は、就労支援施設のスタッフの方も一緒にやってきて、製造を担当してもらいました。まずスタッフの方に製造手順を教え、覚えてもらった後で障がいを持つ方に伝えてもらう、という手順を踏んでいました。私たちには障がいの特性がよくわからない上、知識もあまりなかったので、間に入ってもらうことで作業を進めていきました。順調にできるようになるまで、約1年かかりましたね。」
障がい者雇用の、覚悟
もともと、雇用という考えで就労支援施設からの受け入れをしていたわけではない、と三箇さん。しかし、働く姿を見ているうちに、障がいを持つ彼らの将来的なことを考えたり、彼らの思いを聞いたりしていくうちに、雇用という形に徐々に移っていきます。
三箇さん「はじめに『実習』という形で受け入れを始めました。仕事の訓練を積んでもらいながら、できることを増やしてもらおう、と。製造も接客もしてもらっています。最初に受け入れた時、働く姿やスタンスを見て私たちにとってはとてもいい影響がありましたし、ひいては社会貢献にもつながるのでは…という考えで受け入れを続けました。
ただ、障がいを持つ方を雇用として受け入れるためには、それなりに覚悟が必要です。個々の特性を捉えた上で仕事を振ったり、職場の既存スタッフの指導体制を整えたり…。ただ、そうやって覚悟をすることで、現場のスタッフは成長にもつながります。
最初は、袋詰めをしても遅いし、仕事もなかなか覚えられなくて。ポップコーンは湿気が大敵なので、袋詰めは早くしないと劣化につながってしまいます。でもなかなかできなくて…。製造であれば、機械のタイミングに合わせレシピに合わせて作るので、できるわけです。苦手なこともあったり、できることもあるので、その人に合わせてやっていく感じです。企画を立案して、仕事を進めて、というのはどうしても難しいので、現場スタッフとしてプロフェッショナルになってもらう、という考えのもと、社員登用しています。」
ポップコーンパパは、フレンドリーで親しみのある接客を目指しています。
人間力を高める
三箇さん「仕事として不得意なことも少しずつチャレンジする、得意なことはさらに伸ばしていく、という形で受け入れています。素直で仕事ができるだけではダメで、内面も成長して行ってもらいたい。
ある企業研修で聞いた、
『鬼と金棒』の例え話があります。鬼は人や人間としての魅力、金棒は仕事でありスキルです。鬼も金棒も大きくバランスが取れていればすごくいい。もし鬼が大きくて、金棒が小さくても金棒を振り回すことができる。ただ、鬼が小さく金棒が大きいと金棒を振り回すことはできない。どれだけ仕事ができてスキルが高くても、人間力が低ければ使いこなすことはできない。
社員登用を目指す障がいの方も、このように人間力を伸ばすことができる素質がある、という部分を重視しています。
最初は、障がいを持つ方を受け入れるのには不安がありました。本当に大丈夫か、と。しかし一緒に働く者同士が成長し合う現実を見てきたことで、障がいを受け入れることは今や至って普通です。
『障がいを持っているからできない』ではなく、『障がいを持っているからこれは不得意だよね、じゃあこっちをやっていこう』という感じです。」
ポップコーンの製造風景。
障がい者雇用の前に、まず環境整備ありき
三箇さん「昔はポップコーン専門店がほとんどなく、店舗は大忙し。ノウハウもないため、仕事の効率や作業プロセス、資材の配置が悪かったんです。使っていないものがいつまでもその場にあったり。これを無くしていくことで、そのスペースが有効活用でき、作業効率を上げる、ということで、環境整備の研修を受けて仕事環境を整えていきました。障がいを持つ方が働きやすいように…ではなく、まずは会社として環境を整え、お客様によりスピーディーに商品を届けていくためにです。その中で、表示や標識、定位置管理を、現場を巻き込みながら進めました。
しっかりと力を入れていたのが、整理・整頓・清掃の3Sです。元あった場所に戻したくなる仕組みを作りに力を入れて、戻さないと落ち着かない、という状況を作りました。習慣化するまでは時間がかかりましたが、改善、提案を繰り返す中で仕組み化されていきました。一番取り出しやすい場所に、一番使わないものがあったり(笑)
これらの3Sを通した取り組みによって基盤が整っていたことが、のちの障がい者雇用にもつながっています。構造化、仕組み化がしっかりとできていたら、私たちだけでなく障がいを持つ方もこうすればいいんだ、ということがわかり、実行できますよね。
障がいを持つ方と働き始めてからは、彼らの視点がわからなかったので、アドバイスをもらいながら改善を続けていきました。」
障がいは個性。個性を活かせる会社に!
三箇さん「個性が強すぎでどこの企業にも会わない…という方がいらっしゃると思うんですが、障がいも一つの個性だと思うんです。この個性を活かして働ける、組織単位ではなく人単位で仕事を変えていく、最大限の個々の力を発揮出来る職場を今後は作りたいですね。スタッフの個性を爆発させていく中で、障がいを持つ方も、個性を発揮していって欲しいです。」
個性豊かなポップコーンパパスタッフ達
改善を繰り返しながら、誰もが働きやすい環境づくりを進める姿勢。どこの職場にも必要なものなのだと改めて実感しました。POPCORN PAPA(ポップコーンパパ)は、実店舗だけでなくネット通販も行っているので、お家でポップコーンパパを楽しむことができます。
映画鑑賞や読書などお家で過ごす時間の相棒にももってこいですね。
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