就労移行支援事業所 スリーピース今里
『就労移行支援事業所』という言葉を聞いたことはありますか?就労移行支援事業所とは、障害福祉サービスの一つです。『企業で働きたい』という思いを持つ障害*のある方に対し、働くための知識や能力を高めるための訓練を行う場所です。
*主に精神障害や疾患をお持ちの方、就職・就労・復職に向け職業訓練希望の方、対人関係でお仕事が続かない方、心身の不調、うつ症状のある方が対象です。
スリーピース今里では、一般企業に就職、復職を目指す方にビジネススキルや資格取得支援を行っています。また、社会復帰にはメンタルケアが欠かせないという考えのもと、世界の10大心理学の中で最も効果的だと言われている心理学も取り入れながら、一人ひとりに寄り添った支援を行っています。
一貫性を持った支援が利用者様に与える影響や、事業にかける熱い思い、こんな事業所があることを知らずに悩んでいるかもしれない人へのメッセージなどあふれる情熱を、代表理事 時長瑠美子様と専務理事 瀧川昇三様にお話を伺いました。
スリーピースは三方よし!
利用者・企業、社会、働く私たち、密接に関わりみんなが幸せに…
オオサカジン編集部:就労支援事業を始めようと思ったきっかけはなんですか?
自分を含め家族や周囲の方々の老後の年金問題やこの先の日本の状況に不安を感じ、”より良い社会を作っていくためにも納税者を増やしたい”という思いからでした。負担が増すばかりの医療・介護問題、少子化で納税者となりうる若者が減少し高齢化社会を迎える今、自分たちにできることは何だろう、何かあるはずだと考えていた時に、仕事をしたくてもできない人がいるという現状を知りました。うつなどで長い間闘病している方でも自立を願い働きたいと思っている人を放置することは国としてももったいないことだと思ったのです。
オオサカジン編集部:そんな実体験があったんですね。では、スリーピースの名前の由来はなんですか?
働きたいのに働けない人が沢山いる。一方で国として税収を上げたいのに上がらない。それはもったいないと思ったんです。一人でも多くの人が社会復帰して社会の一員として誇りを持って生きていって欲しい。利用者・企業、社会、やりがいを持って幸せに働くスタッフ…
それらがつながる三方よし、それがスリーピースの由来です。
スリーピース今里の普段の様子
オオサカジン編集部:18歳〜65歳未満の、幅広い世代の方が利用されているのですね。
利用者で多い世代は30代中盤〜40代の方です。
チラシを見てご本人からの申し込みや、ご紹介が多いですね。みなさんに、本当は自立を希望しているけど上手くいかない、歯がゆさを感じている、という心情を感じます。
オオサカジン編集部:利用者の方は、どのようにしてここで過ごされているのですか?
事業所の1日は、1コマ50分4コマです。しっかり毎日通うことを目指しています。
カリキュラムは一人ひとりに合わせて作り、個別学習をしています。基本はパソコンや本に向かい一人での学習ですが、1日1回、協調性を養うことやコミュニケーションをとることを目的に、グループワークも行います。
また、個別の日報を作り、自分で自分の進捗の現在地を把握できるようにしています。
オオサカジン編集部:毎日の日記のようなものですね。週末はお休みですか?
土曜日は基本的に自由参加です。毎週イベントをしており、動物園や美術館、公園に出かける外出イベントに行ったり餃子をみんなで作ったりする調理レクリエーションをしています。ご家族の方を連れて来られる方もいらっしゃいますよ。人との距離感の取り方を学ぶいいきっかけになっています。
オオサカジン編集部:楽しそうですね!
利用者の方には、常にここに来ている目的を忘れないような声がけをしています。ここでお友達を作るよりも、何を目指してここにいるのかを忘れないようにしてもらうことが大切です。
自身の願望に対し、今何をすべきか考え、ステップアップしながら着実に歩んでいくように働きかけています。
長期就労に必要なのはメンタルケア
オオサカジン編集部:『よりよい人間関係を築くための心理学』とはどんな内容なんですか?
選択理論心理学は簡単に説明すると、”すべての行動・結果は自分の選択であり、自分の行動は自分に責任がある”というものです。例えば人や環境によって落ち込むことがありますよね?選択理論ではその落ち込みさえも自らの選択だと言われています。誰が好きこのんで落ちこむねん!ってね(笑)確かに感情という生理現象はコントロールできませんが、起きた現実をどう捉えるか見方を変えることはできます。同じ境遇にいても人によって未来が違うのはそのためです。人は生きて行く過程で他人をコントロールできると思い込み、そこに四苦八苦しているように感じます。相手を変えようとするから人間関係が上手くいかなかったり生き辛さを感じたりするんです。
利用者の方も、いつも同じようなパターンで人間関係が崩れる、上手くいかない、と感じている方が多いです。
人は、環境や他人に幸せを求めてしまうんです。でも、幸せは自分の中にあって、他人からもらったり自分以外に探したりするものではない。ここの捉え方を変えたら、人は変わると思うんです。
オオサカジン編集部:捉え方を変える!大切ですね。
ビジネススキルは会社で教えてもらうことができますが、働いていく上でのメンタルケアは誰も教えてくれません。自分でのセルフケアになってくるんですが、これは長期就労には欠かせない部分なんです。
だからこそ効果的な心理学を取り入れ、会社の風土や環境など自分が変えられないものに向き合うのではなく、自分でコントロールできることにフォーカスし”自分は何を求め何のために仕事をしているのか”意義づけ動機づけのセルフケアができるようになれば目の前のことに一喜一憂せずにすみます。
オオサカジン編集部:セルフケアができるかどうか、ということが問題なんですね。
チョイスセオリーです。
過去を見てどうしていくのか考えるのではなく、未来を見てどうするか考えるんです。みなさん過去を悔やんで、過去を引きずって今を生きていらっしゃる。でも、これからどうしたいかという考え方をしないと前には進めない。この考え方がこの事業所の利用者の方には合っていると思います。
心理学では、捉え方を伝えながら、どう捉えるかはご自身に任せる。その中で支援を行っています。実際、事業所から就職された方は、この心理学と出会っていなければ今の自分は無いなどの声も聞かれます。
その場しのぎのカウンセリングではなく、最終的に目指す自立が自分でできないと意味がないですからね。自立=就職を継続すること。収入を得て自分で生活するための支援です。
オオサカジン編集部:卒業後もこの心理学を学ぶ機会はあるんですか?
卒業後は、1週間に1回は面談をし、アフターフォローを行っています。
来年からは卒業生の皆さんからの要望で、定着するための支援としてこの心理学の定期実践OB会が始まります。
そこで、より良い人間関係を築くためのより実践的な応用編を学ぶことが出来ます。
卒業後もまだまだこの心理学を体得して頂き、長く働いていけるように行う予定です。
未来は自分で作ることができる!
オオサカジン編集部:事業所としての、今後の展望を教えてください。
未来を自分で作っていくには、いかに明確に願望を思い描くかにかかっています。曖昧な願望からは曖昧な結果しか生まれません。利用者の方が、どうやったら、自分のなりたい姿を明確に思い描くことができるか、そのアプローチができるのが、スリーピースグループを管轄する障がい福祉サービス事業部です。
また、現在進めていることとして、職場で精神疾患などに陥った方への対応方法がわからず困っている、対応できない状況の企業様。精神疾患などになった人、なりかけた人。それぞれに対して直接個別に、カウンセリングや電話、チャットシステムを使っての対応をしていきます。
企業向けのうつを出さないワークショップだけでなく、スタッフ一人一人に対応しカウンセリングなどのメンタルケアも行います。第三者として話を聞きながら、受け皿ではなく予防する側として企業様に関わっていきます。
医療などのクリニックでは体調や思考の回復はできるが、会社の望む復職や、就労に対して前向きな姿勢に持っていくことは難しいです。でも、私たちにはこれまでの支援ノウハウやケーススタディからその対応が可能です。
知ってもらいたい!
オオサカジン編集部:最後に、読者の方にお伝えしたいことを教えてください。
私自身、自分が今こういった仕事をしている、という話をすると、「実は知り合いに精神疾患で悩んでいて…」という話がたくさん出てくるんです。そういった人たちに、まずはこんな施設があることを知って欲しい。
就職したいと思いながらも、怖い、いまさらどうやったらいいかがわからない、という方に向けての、情報発信の必要性を感じています。
ここでは訓練をし、就職支援もしています。もし、周りに悩んでいる人がいるのであれば、こんな施設があることを教えてあげて欲しいです。
オオサカジン編集部:『知る』ということは何よりも重要ですね。
事業、利用者の方、関わる企業の方、三方に対するよし!なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
こちらスリーピース今里では、随時施設見学を行っています。
また、定期的に“事業所を知る”という意味で楽しいイベントも開催しています!
事業所情報
就労移行支援事業所 スリーピース今里
〒537-0013 大阪府大阪市東成区大今里南
1丁目2-11 O.Tビル2階
【TEL】06−6974−3339
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