山本精密株式会社
政府の「働き方改革」では“高年齢者が健康で、意欲と能力がある限り年齢にかかわりなく働き続けることができる社会の実現を目指す”とあります。つまり、65歳以上への定年引上げや高年齢者の雇用環境整備、高年齢の有期契約労働者を無期雇用に転換する等の施策を進めています。
八尾市にある山本精密株式会社は、ミクロン精度での試作から量産までの切削加工メーカー。
山本金属製作所の系列会社として順調に業績を伸ばしています。
この山本精密株式会社には、70歳を超える高年齢でありながら、現役で働く社員がなんと4名も在籍されています。
詳しいお話を同社営業部課長中村様、熊田様両名にお伺いしました。
70歳を超えた、現役４名
医療機器など様々な機械の精密部品を製造する山本精密株式会社で、マシニング加工（研磨や穴あけなどの金属部品の製造）を担当しているのが、安齋さん77歳。60歳で入社され、その後もずっと継続して勤務しています。
中村課長によると、「定年後に継続して勤めるかどうかは、本人の希望を優先しています。ご本人が続けたいとおっしゃれば、可能な範囲でお勤めいただいています。」とのこと。
安齋さんは若い人には真似できない熟練工として、今でもなくてはならない存在であり、嘱託社員として他の社員とおなじ勤務時間、日数で勤めています。
プライベートではゴルフを趣味とし、社内コンペの参加はもちろんのこと、今でもコースを回っているとか。さすがに自動車での通勤はご遠慮していただいているそうですが、自転車で通勤するなど、健康そのものです。
「安齋さんは治工具系に長けていて、高等な技術をお持ちです。ご本人が体力に限界とおっしゃるまで、お勤めいただく予定です。でもまだまだお元気ですね（笑）。」と中村課長はそのバイタリティーを称えます。
製造現場で安齋さんにお聞きしました。
─このお仕事の楽しみは何ですか？
「商品が出来上がったときに、儲かったなぁ～と（笑）」
技術職の方によくある商品の完成を喜んでいるだけでなく、コスト意識を持っていることに、脱帽でした。
日々の生活リズムをしっかり守る
精密部品の面取りなどの仕上げを担当する桃井さんは79歳。プライベートでは家庭菜園や花の栽培など、穏やかな趣味をお持ちです。工場まわりにも自ら菜園をこしらえ社員を和ませています。自宅からは一時間近くをかけ、やはり自転車で通勤されていました。こうしたご高年齢の方に共通するのは、日々の生活サイクルをきっちりと守っておられるということ。出社時間、退社時間は、判で押したように同じ時間です。朝の起床時間、帰宅後の晩酌の量も飲みすぎないよう、毎日決めておられる、自己管理の賜物。ここに元気の秘訣がありました。
他にも70歳代の方が2名いらっしゃいます。
みなさん、仕事にやりがいを感じ、元気にお仕事されています。しかし、平均年齢の高い会社ではありません。山本精密株式会社の全体の平均年齢は30歳代前半と、一般の会社と変わりありません。ごく普通に、ご高年齢の皆さんは若い人と混じりながらも、若い人にも負けない仕事をしているということです。つまり、本当に仕事が好きで、仕事にやりがいを感じ、70歳を超えた今でも負けたくない、納得した仕事をこなしたい。仕上げた仕事にプライドをお持ちなのでしょう。
かといって、みなさん頑固一徹ではないということです。仕事中はもちろん、余暇にあっても若い人と気さくに接し、先日も３０歳台の方達と焼肉を食べに行ったりもしています。
よく食べ、よく飲み、若い人たちともよく話す。そしてよく仕事する。そのあたりに健康で仕事を続ける秘訣がありそうです。
ベテランの技術を後進に残す
高年齢である、と同時にベテランの熟練工である皆さんの技術・経験は、一長一短では真似できないものです。しかし、いつまでも熟練工のみなさんに頼り続けるわけにはいきません。企業としては、技術をいかにして引き継ぎ、今後の財産にするかがこれからの課題だと中村課長は語ります。
「可能な部分はマニュアル化し、細かな技術に関してもCAD/CAMを使って“見える化”（企業活動においてデータから得られる問題を客観的に把握しやすい指標、数表、グラフなどにして共通認識させること）を進めています。なかなか業務が多忙で、ゆっくりと時間を取ることはできませんが、皆さんの素晴らしい技術を残すように努めているところです。」
機械化が進む製作現場にあっても、人の手による微妙な違いは、なかなか真似できないことだそうです。ベテランだからできること、成せることを大いに評価し、それを後進につなげていくことで、会社はさらに成長していくのではないでしょうか。
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